【SF小説のすすめ】2019年のベスト3作
2019年は、SF当たり年だったそうで、たくさんのハイレベルなSF小説が世に放たれました。
その中でも、特に素晴らしい3作を紹介しようと思います。
この3冊は、普段本を買わない僕が買ってしまうほど前評判が高く、さらに、その期待をも超えてくるような素晴らしいクオリティの作品たちなので、ぜひ読んでほしいです!
(書評って感じにはなってません。なんとなくの雰囲気が伝われば......)
なめらかな世界と、その敵 (伴名 練)
伴名練さんの短編集で、7月に出版されました。
ハードSF的なテーマと、爽やかなストーリー、軽快な文章がうまくマッチしていて、非常に読みやすいのに、読後感がしっかりとある。そんな珠玉の短編集です。
全部素晴らしいのですが、僕が特に気に入ったのは、「美亜羽へ贈る拳銃」と「ひかりより速く、ゆるやかに」です。
「美亜羽へ贈る拳銃」は、名前のとおり、伊藤計劃の「ハーモニー」を元にしたような作品(この言い方で合ってるのか?)で、ハーモニー好きはもちろん、知らなくても楽しめる作品だと思います。
冷たく、美しい、みたいな感じの作品で好きです。
「ひかりより速く、ゆるやかに」はこの短編集のための書き下ろし作品です。ありそうでなかった設定*1、爽やかな青春小説的な感じが、本当に好きです。これだけでも読む価値があると思います。
あと、表題作「なめらかな世界と、その敵」は3月いっぱい無料公開をされているので、とりあえず読んでみてください。これも、本当にいい作品です。
いま日本でいちばん読まれているSF小説。#王様のブランチ でのご紹介や、#Twitter文学賞 の第2位を記念して、期間限定で無料公開します。
— 溝口力丸 (@marumizog) 2020年3月8日
「嫌な現実」を自在に乗り換えられたら? SF小説『なめらかな世界と、その敵』|Hayakawa Books & Magazines(β) @Hayakawashobo https://t.co/xtIy8FCuzK
ちなみに、僕はサイン本を持ってます(自慢です)
三体 (劉 慈欣)
これは言わずと知れた中国の大人気長編SFですが、日本で出版されたのは去年です。
もともと大人気の作品でしたし、「折りたたみ北京」を読んで中国SFもいいなってことに気づいたので買いました。
科学者・極秘プロジェクト・謎のゲーム という3つのキーワードをあげただけでも、もう面白そうな感じがしませんか?
最近*2のSFにありがちな、無秩序な発展に警鐘を鳴らすような作品ではなく、科学が正義っぽい感じで出てきます。また、登場人物もなんか魅力があって、単純に小説として非常に面白いです。
中国では2000万冊以上売れてるらしいので、そりゃ面白いよね。
三体は三部作らしいので、続編が和訳されるのも楽しみです。
息吹 (テッド・チャン)
僕は心待ちにしていた1冊です。テッド・チャンは映画「メッセージ」*3の原作になった「あなたの人生の物語」を書いた作家です。
一昨年に「あなたの人生の物語」を読んで、最高かよってなったので、ほんとに待ってましたって感じです。
テッド・チャンの文章は儚さみたいなものとか、透明感みたいなのが感じられて非常に好きです。ザ・ハードSFって感じのテーマなのに、人間に絶望していないというか、期待している感じのところも好きです。(フアンより)
人間について理解が深まる。
最上のサイエンス・フィクション。
(バラク・オバマ)
本の帯より
このオバマさんの感想は本当にその通りで、フィクションの世界を通じて、自分たちのことを理解していくことができる、そんな作品だと思います。
短編集なんですが、特に気に入ったのは、表題作の「息吹」と書きおろしの「不安は自由のめまい」です。
「息吹」は人間こそ出てきませんが、心に染みわたる。そんな名作で、「不安は自由のめまい」も「選択」がテーマになった素晴らしい作品だと思います。